りゅうのブログ

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“Deep Sea Portfolio” - エンジニアリング編

〜ニュースに取上げられない、独自の生態系を貫く株式銘柄への集中投資〜
*本内容は株式会社日本取引所グループが開催している「日本取引所グループ ニュース分析チャレンジ」に関したブログです。
2021年4月28日


本記事について
本記事ではSignate「日本取引所グループ ニュース分析チャレンジ」において私達のチームが調査した“Deep Sea Portfolio”の具体的なポートフォリオの構築手順などのエンジニアリング面からの紹介を行うものになっております。
“Deep Sea Portfolio” についての背景や調査、考察等は別の記事で詳細に扱っていますので是非ご覧ください!
jerry-tajiri.hatenablog.com

“Deep Sea Portfolio” の概要

Deep Sea Portfolioの戦略コンセプトは以下の3つ

  1. 「ニュースに取り上げられない」という独自の生態系を生きている銘柄をユニバースとする(ブログ参照
  2. 分析チャレンジの期間は決算発表時期の影響を受けることから、ファンダメンタルズでの魅力度変化を適切に反映させる投資戦略
  3. コンペのパフォーマンスは月曜日の始値で買い付け、金曜日の終値で売るスウィングトレードに適したテクニカル戦術

ポートフォリオの構築

ポートフォリオは全銘柄のうちニュースに取り上げられたことのない銘柄(NonNews銘柄)のファンダメンタル情報による魅力度とテクニカル戦術スコアを算出して、ランキング付けをすることで構築を行いました。

ポートフォリオの構築のポイントは以下の3つ

  1. NonNews銘柄の抽出
  2. ファンダメンタルズ魅力度指標の算出
  3. テクニカル戦術スコアの算出

NonNews銘柄の抽出

  • 今回対象となるユニバース(東京証券取引所上場銘柄かつ時価総額200億円以上の1,779銘柄)から、ニュースで一度も取り上げられていない銘柄のみを抽出
  • この時点で、1,779銘柄から、23銘柄まで候補を絞り込むことが可能
  • この23銘柄を我々の投資対象ユニバースに決定

ファンダメンタルズ魅力度指標の算出

  • 今回のコンペでは、週明けの始値で購入し、週末の終値で売却することを繰り返すスウィングトレード方式でパフォーマンスを評価
  • 戦術としては、短期の相場変動に対して着実に利益を積み上げていくための方法として、前週に上昇した銘柄の魅力度を下げ、前週に下落した銘柄の魅力度を上げるというテクニカル戦術スコアを構築し使用
  • テクニカル戦術スコアに関しては複数種類作成してバックテストを用いて、実際のポートフォリオ選択で使用する指標を決定

テクニカル戦術スコアの算出

  • 今回のコンペでは、週明けの始値で購入し、週末の終値で売却することを繰り返すスウィングトレード方式でパフォーマンスを評価
  • 戦略としては、決算発表期の短期の相場変動に対して着実に利益を積み上げていくための方法として、前週に上昇した銘柄の魅力度を下げ、前週に下落した銘柄の魅力度を上げるというテクニカル指標を構築し使用
  • テクニカル魅力度指標に関しては複数種類作成してバックテストを用いて、実際のポートフォリオ選択で使用する指標を決定

ポートフォリオ最適化

前項のモデルポートフォリオから実際に投資する銘柄落とし込むポートフォリオの最適化にはバックテストを用いました。
バックテストを用いた理由は、組み入れる銘柄のボラティリティの調整です。銘柄数が少ないとボラティリティが高すぎてしまい、特定の銘柄のリターンの影響を受けやすくなるし、銘柄数が多いとボラティリティが低くなり、ディフェンシブなポートフォリオになってしまいます。
このバックテストの結果と個別銘柄の特性(業種エクスポージャーなど)を最終的に考慮して銘柄数と使用するテクニカル戦術スコアを決定しました。

バックテストの結果

選択銘柄数をランキングの上位5, 10, 15, 20, 23と増やした際のバックテストの結果(2020年1月から12月の1年間)は以下の図のようになりました。
universeは本コンペティションで扱える1779のリターンです。図から23銘柄のうちランキング上位5銘柄を選択した場合が最もパフォーマンスが高いということが分かりました。
バックテストの結果から最終的に、毎週のランキング上位5銘柄をポートフォリオに組み入れることにしました。

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2020年1月から12月までの週次リターン

まとめ

本記事では“Deep Sea Portfolio”というニュースの記事というノイズの影響を受けず、定量的に判断することができる企業のみを用いたポートフォリオの構築方法について紹介しました。
“Deep Sea Portfolio”のことや実装面について、質問やアドバイス等がありましたら連絡を頂ければ幸いです!
本コンペではモデルの評価を2021年 5/10(日)から6/4(金)までリアルタイムで行うので、パフォーマンス等の考察についても追記していければと思います!